DeepSeek Harness(コマンド名は dsh)は、DeepSeek が開発したオープンソースのエージェントハーネスです。README によると、Cordis フレームワークを土台にした「すべてがプラグイン」という設計で、ツールやスキル、さらには画面の一部までプラグインとして追加・削除したり、自作したりできます。DeepSeek のサイトでは、資料整理や表計算といった日常業務、リポジトリでのコーディング、出典つきの調べもの、時間のかかるバックグラウンド処理に使えると説明しています。コードは MIT ライセンスで GitHub に公開されています。

現在はまだデベロッパープレビューの段階です。README は互換性を壊す変更が今後あると大文字で警告しており、DeepSeek の安全上の注意書きでは、セキュリティ監査を受けていないソフトウェアだとしています。エージェントはモデルが生成したコマンドを実行し、サードパーティのプラグインを読み込み、渡されたファイルや認証情報にアクセスできるため、DeepSeek は必要最小限の権限で動かすこと、できれば仮想マシンやコンテナなどの専用環境を使うこと、バックアップを取ること、プラグインや提案されたコマンドは実行前に確認することを勧めています。

DeepSeek がこのツールに力を入れていることは、今まさに見て取れます。10 月 17 日に DeepSeek-V4.1-Flash-1017 を公開した際、更新履歴にはこのモデルを DeepSeek Harness 向けに特に最適化したと書かれ、Harness を 0.2.1-rc.1 以降に更新するよう求めていました。

デスクトップアプリ、Web UI、コマンドライン

入り口は 3 つあります。いちばん手軽なのはデスクトップアプリで、DeepSeek の Harness ページには Apple シリコン搭載の macOS 向けと 64 ビット版 Windows 向けのダウンロードがあります。Linux 向けのデスクトップ版はありません。デスクトップ版の README によると、アプリは Web UI 一式をネイティブのウィンドウで包んだもので、Node.js、pnpm、Python の実行環境を同梱しているため、システムに Node.js を入れる必要はありません。

2 つ目は README が最初に紹介している npm 経由の Web UI、3 つ目はソースコードから動かす方法で、こちらは Harness 自体を開発する人向けです。Linux では npm かソースからの方法を使うことになります。npm 経由の方法について README は対応 OS を明記していませんが、別にある Python SDK のガイドでは、Linux x64・arm64、Apple シリコンの macOS 14 以降、Windows x64 が挙げられています。

DeepSeek Harness のインストール手順

DeepSeek の README と Web UI ガイドによると、npm から最初のセッションを始める流れは次のとおりです。

  • Node.js をインストールします。README にバージョンの指定はありません。
  • エージェントに作業させたいプロジェクトのフォルダでターミナルを開き、npx @deepseek-ai/dsh web を実行します。Web UI が手元のマシンの 3080 番ポートで起動し、既定のブラウザで開きます。SSH 経由ではアドレスが表示されるだけで、--no-open を付けるとブラウザを開かずにサーバーだけを起動します。
  • Web UI でワークスペースを選びます。dsh を起動したフォルダを追加して選択するまで、入力欄は使えません。
  • 次の節のとおりモデルを設定し、セッションを始めます。

ソースから動かす場合は、README によるとリポジトリをクローンして pnpm install と pnpm run build を実行し、pnpm dsh web で起動します。

Windows のデスクトップ版インストーラーは、現在のユーザーにだけインストールします。デスクトップ版の README によると、ウィンドウを閉じてもアプリはシステムトレイに隠れるだけで、実行中のタスクは続きます。アプリのメニューにある Manage dsh Command を使うと、Windows ではユーザーの PATH に、macOS では /usr/local/bin に dsh コマンドが追加され、npm で別途インストールしなくてもコマンドラインから使えます。

後述する更新の話に関わる点がひとつあります。北京時間 10 月 17 日 18 時 30 分の時点で、npm の @deepseek-ai/dsh の既定タグ「latest」はまだ 0.2.0-rc.2 を指しており、0.2.1-rc.2 は「next」タグで公開されていました。README のコマンドはバージョンを指定しておらず、特定のリリースを選ぶ方法も DeepSeek のドキュメントには書かれていないので、実際にどのバージョンが動いているか確認しておくとよいでしょう。新しいビルドを使いたい場合は、npm の一般的なタグ指定の書き方で npx @deepseek-ai/dsh@next web と実行できます。これは DeepSeek のドキュメントではなく npm の標準的な使い方で、タグは本記事の公開後に変わる可能性があります。

npx でのインストールが止まってしまう場合

DeepSeek の README やドキュメントには、インストールが進まなくなった場合の説明がなく、修正を記したリリースノートもありません。公式 GitHub リポジトリの Discussions では、8 月以降、npx @deepseek-ai/dsh web が CPU を使い切ったまま終わらないという報告がユーザーから寄せられており、Windows、macOS、Linux のそれぞれで再現したとの書き込みがあります。DeepSeek のメンテナーは 8 月 22 日に調査するとコメントしましたが、その後、公式の回避策は示されていません。スレッドに出ている回避策はほかのユーザーによるもので、DeepSeek のものではありません。公式に案内されている方法のうち npm でのインストールを経ないのはデスクトップ版だけで、README によるとシステムの Node.js や pnpm に依存しません。

DeepSeek Harness を deepseek-flash に接続する

DeepSeek のモデル設定ガイドでは、API キーを使う方法を次のように説明しています。

  • DeepSeek のプラットフォームで API キーを取得します。
  • Harness で「設定」から「モデル」を開きます。DeepSeek のカードには API キーの欄がひとつだけあるので、キーを入力して保存します。キーは Harness のホームフォルダにある認証情報ファイルに保存され、以後は伏せ字でしか表示されません。再起動は不要です。
  • モデル選択で deepseek-flash を選びます。Harness に組み込まれた DeepSeek のモデル一覧には、テキストと画像を扱える deepseek-flash と、テキストのみの deepseek-v4-pro があり、どちらもコンテキストは 100 万トークンです。選んだモデルは新しいセッションの既定になります。
  • 必要なら Effort メニューで推論の強さを選びます。DeepSeek 純正のルートでは off、low、high、max の 4 段階です。

DeepSeek の API は現在 deepseek-flash という名前で V4.1-Flash-1017 を提供しているので、新モデルを使うためにほかに変えることはありません。なお、すでにリクエストを送ったセッションは、そのログに記録されたモデルを使い続けます。

API キーの代わりに DeepSeek アカウントでサインインすることもできます。v0.2.1-rc.1 以降、ローカルの HTTP で開いた Web UI でアカウントにサインインでき、デスクトップ版にもサインイン画面があります。DeepSeek のドキュメントによると、この方法ではモデル一覧がアカウントから取得され、より新しいクライアントが必要なモデルは Harness 側で非表示になります。そうしたモデルを指定すると、必要なバージョンを示すエラーになります。1017 にそうした最低バージョンが設定されているかどうか、DeepSeek は明らかにしていません。

dsh headless の後にタスクを続けて実行するヘッドレスモードは扱いが異なります。0.2.1 のアルファ版以降、既定では Web UI に保存したキーを読まず、環境変数 DEEPSEEK_API_KEY か .env ファイルからキーを読み込みます。

v0.2.1-rc.1 以降に更新すべき理由

DeepSeek の説明は簡潔です。10 月 17 日の更新履歴では、1017 をほかのエージェントツールとともに DeepSeek Harness 向けに調整したとし、「新モデルを最良の状態で使うため」に Harness 0.2.1-rc.1 以降を勧めています。北京時間 16 時 35 分の X での発表にも同じ案内がありました。

このバージョンの中身はリリースノートでわかります。v0.2.1-rc.1 は北京時間 10 月 17 日 13 時 22 分に GitHub で公開された 0.2.1 系の最初のリリース候補で、v0.2.0-rc.2 以降の変更をまとめたものです。Web UI でのアカウントサインイン、アカウントで使えるモデルに合わせて更新される DeepSeek のモデル一覧、画面からのモデルごとの推論レベル設定、メッセージに貼り付けたキーやトークンの自動マスク、独自のインデックスからのプラグインのインストール、/compact による手動のコンテキスト圧縮などが含まれます。一方で、前述のヘッドレスモードでのキーの扱いや Azure プロバイダーの名称変更など、挙動が変わる点もあります。このリリースノートには 1017 や Search・Fetch の名前は出てきません。それらは同じ日の 16 時 16 分に出た v0.2.1-rc.2 で、DeepSeek-V4.1-Flash-1017 への対応と、Web 検索の設定でオンにできる DeepSeek の Search・Fetch API への対応が加わりました。GitHub ではどちらもプレリリース扱いです。

デスクトップ版は、アプリに組み込まれた更新チェックと「Check for Updates」メニューで更新できます。現在配布中のデスクトップ版にどのバージョンの Harness が入っているかは、DeepSeek は示していません。

プラグイン、エージェント、そのほかのモード

設計の中心はプラグインです。「プラグイン」ページから既存のプラグインを入れられるほか、創造モードで欲しいプラグインを説明すれば、エージェントが書いてインストールまで行います。DeepSeek のサイトでは、この方法でポモドーロタイマーを作る様子を紹介しています。rc.1 のリリースノートによると、公式プラグイン一覧から現行リリースに対応した Claude Code と Codex のバンドルを入れられるほか、実験的な Claude Code Mods 互換レイヤーもあります。ただし DeepSeek は、これは現時点で実用的な完全互換を提供するためのものではないとしています。実験的な「カスタムプラグインマーケット」機能ではサードパーティのプラグイン一覧を閲覧できますが、Harness にインデックスは同梱されておらず、掲載内容は第三者のものだと DeepSeek は注意を促しています。開発者は dsh plugin コマンドでプラグインを追加することもでき、DeepSeek はプラグイン作者に GitHub のリポジトリへ dsh-plugin トピックを付けるよう呼びかけています。

エージェントについては、ワークスペースのファイルを読み書きし、コマンドを実行し、サブエージェントに作業を任せ、計画を立てながら進め、承認が必要な操作の前には確認を求める、とドキュメントは説明しています。「プラグイン」ページの実験的プラグインには、エージェントチームや定期タスクもあります。Web UI のほかに、dsh コマンドにはタスクをひとつこなして終了するヘッドレスモード、Agent Client Protocol でクライアントに応答する ACP モード、Python SDK が使う SDK モードがあり、Python SDK は pip で deepseek-harness-sdk としてインストールできます。プルリクエストがレビュー待ちになると読み取り専用のレビューセッションを開く、GitHub の webhook 連携もオプションで用意されています。

VS Code の拡張機能やほかのエディターとの連携について、DeepSeek のドキュメントには記載がありません。README には、SSH 経由で起動した場合は転送先のアドレスを SSH クライアントやエディターが持つ、と書かれているだけです。

料金

DeepSeek Harness 自体は無料のオープンソースソフトウェアで、DeepSeek は価格を設定していません。費用がかかるのは DeepSeek API のモデル利用です。DeepSeek の料金ページでは、deepseek-flash のピーク時の価格は 100 万トークンあたり入力(キャッシュミス)0.3 ドル、入力(キャッシュヒット)0.006 ドル、出力 1.2 ドルで、オフピーク時はその半額です。ピーク時間は北京時間の平日 9 時〜12 時と 14 時〜18 時(中国の祝日を除く)です。API キーではなくアカウントでサインインした場合の課金方法は、DeepSeek のドキュメントには書かれていません。

Harness 内での Web 検索には別の料金があります。DeepSeek の料金ページによると、DeepSeek Harness、Claude Code、Codex から DeepSeek API を使うと、サーバー側のツール呼び出しですでに Search API と Fetch API が使われており、この分は現在無料です。北京時間 2026 年 11 月 1 日 0 時からリクエスト単位の課金が始まり、それぞれ成功したリクエスト 1,000 件あたり 0.75 ドルです。2 つの API と 1017 モデルについては、下にリンクした別の記事で詳しく取り上げています。