結論から
禁止されていません。2026 年 10 月 21 日時点で、米国全土を対象とした DeepSeek の禁止はありません。国土安全保障省(DHS)が 2026 年 10 月 20 日に Federal Register で公表した命令の対象は、連邦の民用行政機関だけです。民間企業、開発者、一般の利用者を禁止するとは書かれていません。発表そのものは DHS による DeepSeek 削除命令の速報 にまとめています。本稿では対象範囲を整理し、関連する規制を追跡します。
DHS の命令の対象
Federal Register 文書 2026-21447(Docket No. DHS-2026-0628)は、国土安全保障長官が Federal Acquisition Supply Chain Security Act of 2018 に基づいて出した命令の告示です。告示によると、命令の内容は 2 点です。
- 調達:Hangzhou DeepSeek Artificial Intelligence Co., Ltd(DeepSeek)と関連事業体が開発した IT 製品・サービスを、連邦民用機関の調達から排除する。
- 削除:DeepSeek と関連事業体の製品、および DeepSeek の実装を用いて開発された第三者の製品・サービスを、すべて民用機関の IT から削除する。
付属の署名済み命令(Exclusion and Removal Order #2026-01)には、次の詳細があります。
- 適用対象:「Federal Civilian Executive Branch Agencies except for their national security systems and secure compartmented information systems」(連邦民用行政機関。ただし国家安全保障システムと機密区分情報システムを除く)。国土安全保障長官の権限は、Department of War と国家情報長官室の管轄システムには及ばないとしています。
- 第三者製品:脚注で、民用機関に製品・サービスを提供するための DeepSeek の第三者実装も含むとしています。
- 調達の排除:命令の発出直後から有効で、機関の承認製品リスト、サービス事業者の機器リスト、e コマース市場など、調達を担う仕組みにも及びます。
- 削除の時期:対象製品は命令の発出直後に削除するか、例外を申請しなければなりません。
- 例外:機関は、命令を自機関に適用しないこと、特定の措置の除外、遵守の延期を申請できます。申請は発出から 60 日以内に書面で行い、強い正当理由と代替の緩和策を示す必要があります。審査は CISA が行います。
- 暫定措置:削除完了までの間、通信の監視、ログ強化、データ持ち出し対策、異常の検知が推奨されています。
- 見直し:命令は 1 年以内に見直され、その後は毎年見直されます。
押さえておきたい日付
付属命令の Original Release Date は 2026 年 7 月 24 日で、告示は 2026 年 10 月 20 日に掲載されました。命令は例外申請の期限を発出から 60 日以内としていますが、それがどちらの日付を指すのかは書かれていません。Federal Register への提出は 2026 年 10 月 19 日午前 8 時 45 分(米東部時間、北京時間では 10 月 19 日 20 時 45 分)です。
DHS が挙げた理由
命令のリスク概要は、DeepSeek のモデルが「multiple threat vectors」(複数の脅威経路)を持つこと、サーバーが中国にあること、米国政府職員やベンダーが使えば「may result in the transfer of sensitive data to the PRC」(機微データが中国に移転する結果になりうる)ことを挙げています。DeepSeek の iOS アプリに脆弱性が見つかったとする研究も引用しています。
命令に書かれていないこと
アプリストア、一般消費者の利用、民間企業、連邦民用システム以外でのオープンウェイトモデルの自前運用については触れていません。モデルの詳細と公式の入口は DeepSeek のモデルページ を参照してください。
公式出典のあるほかの規制
政府の公式ページで確認できたものだけを載せています。いずれも全面禁止より範囲は狭いものです。
- テキサス州(2025 年 1 月 31 日):Greg Abbott 知事の布告で DeepSeek が州の禁止技術リストに追加され、州支給端末と州の業務に使う私物端末が対象になりました(Office of the Texas Governor)。
- ニューヨーク州(2025 年 2 月 10 日):Kathy Hochul 知事が、州 IT サービス局が管理する政府端末とネットワークで DeepSeek アプリのダウンロードを禁止すると発表しました(Office of the New York Governor)。
- オーストラリア(2025 年 2 月 4 日):内務省の PSPF Direction 001-2025 は、政府機関に DeepSeek の製品、アプリ、ウェブサービスの使用とインストールを防ぎ、既存のものを政府のシステムと端末から削除するよう求めています(Protective Security Policy Framework)。
- イタリア(2025 年 1 月 30 日):データ保護当局が緊急措置として即時に、Hangzhou DeepSeek Artificial Intelligence と Beijing DeepSeek Artificial Intelligence によるイタリアの利用者データの処理を制限しました(Garante per la protezione dei dati personali)。
中国の反応
2026 年 10 月 20 日の定例記者会見で、中国外交部の毛寧報道官は「中国は一貫して国家安全の概念の拡大解釈と、科学技術・経済貿易問題の政治化に反対する。中国企業の正当な権益を断固として守る」と述べました(中国語の公式記録より翻訳)。
新たな公式の規制が出た場合、このページを更新します。
